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《15》
「まぁまぁ、ちょっと位ゆっくりしても良いじゃない」
「え?」
早く教室を出たそうな相原とは対照的に、志水はマイペースに俺の手を引く。
「君くらい大柄でも、セーラー服のサイズがあるんだね」
いつもは、お姫様と呼んでくる志水に、君と呼ばれて何だか逆に恥ずかしい。
勿論、こんな姿で志水と相原の前に居続けるのはもっと恥ずかしい。
「お、俺…、仕事があるから…」
何とか逃げようと後退ると、今度は何故か相原の手が伸びてきて、スカートの端を掴む。
「こんなん売ってんのかよ。野郎用のセーラー服なんて、どこに需要あんだよ」
スカートの裾を軽く引っ張られて、思わずスカートを押さえる。
所謂いやんのポーズになってしまった。
「…はっ」
そんな俺の反応に相原が鼻で笑う。
こ、これは、完全に揶揄われている…………。
「………も、勘弁して下さい。先輩…!」
二人に、本当に許してくれと涙目でアイコンタクトを送る。
だが、相原はニヤリと笑い、志水はにこにこと笑みを深める。
「まさか、下着も女もんか?」
ぴろっと軽くスカートを捲られ、トランクスの裾が見えた。
「ちょっ…!?」
「何女みてぇな反応してんだよ。オカマ野郎」
「相原ばっかり楽しんでないで、俺にも構わせてよ」
「い、いや、その…」
志水に手を引っ張られて、相原から体が離れた時だった。
ーダンッ
テーブルに叩きつける様にグラスが置かれ、中身が周りに盛大に飛び散った。
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