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《18》
「…………へぇ。まぁ、いいや、利久はもう良いから、下がって。着替えて休憩入って良いから」
「…………何で?」
「何でって…」
「まだ休憩する程、働いてねぇし…」
「………」
困った様に、溜息を吐いた良次を見て、何だか異様に悲しくなった。
何か。
被害妄想かもしんねぇけどさ。
お前なんか居ても邪魔になるだけって言われてるみてぇで、悲しかった。
何の役にも立てねぇんだって、思い知らされたみてぇで。
実際、何も役に立てねぇんだけど…。
そう考えて、思わず涙が出そうになって。
「………休憩、行ってくる」
俺は逃げる様に、教室を出た。
◇◇◇
「あれ、トッシーも休憩?」
「…お前らも休憩?」
クラスの女子に囲まれて、俺は首を傾げる。
ぐるりと俺を取り囲んでいる女子を見渡せば、裏方である筈の女子がほぼ全員居て、喫茶の方は大丈夫なのだろうか。
「大和くんが、今落ち着いてるから、女子は休憩入って良いって。大和くんも戻ってきたし、後は男子が回してくれるみたいだよ~」
「そっか…」
「トッシー、何か元気ない?大丈夫?」
「…何か、もう俺お役御免みたいでさ。もう着替えて良いんだって」
「えー、そうなの?」
「勿体ないよ!折角可愛くしたのに!」
「いや、可愛くはねぇんだけどさ…」
「折角だから、着替える前に皆で模擬店まわろうよ~!ゆり、アイス食べたい~」
「ね!行こうよ、トッシー!」
「あ、ちょっ…、お前ら引っ張んなって…!」
斯くして俺は、クラスの女子に引っ張られて、女装のまま校内に繰り出す羽目になったのだった。
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