301 / 346

《23》

「どういう事?」 心底不思議そうに勇介が問う。 「だって、大和くん…」 「わー!何でもねぇからっ!!」 慌ててお喋りな女子を遮って大声を張り上げる。 その様子を訝しげに勇介は見ていた。 「大和…?」 マズい。 勇介には、俺が男と付き合ってる事をまだ伝えられていないのだから。 いずれは伝えなきゃいけないとは思っているけれど、こんな女装姿でそんな事がバレたら、余計な誤解まで生まれてしまいそうだ。 俺は何でもないと慌てて首を振る。 「あー、そうだ!時間、大丈夫か?」 咄嗟に言った俺の言葉に、勇介が自分の時計に視線を移す。 「大丈夫…じゃないな。実は、利久に会えるかなって、マネージャーの目を盗んでこっそり抜け出したんだよね」 「え?そうなのか?」 「うん、また後で会いに行くよ」 「お、おう!」 「久しぶりに会えて嬉しかったよ」 少し照れ臭そうにはにかんで、勇介は待機場所があるだろう方向に駆け足で消えていった。 俺はホッと胸を撫で下ろす。 勇介に、いつか伝えなきゃいけないとは思うけれど、何て伝えたら良いんだろうな。 引かれたり、軽蔑されないか、心配だった。 勇介は、本当に大切な親友だから…。 俺の後ろでは、女子達が口々に感嘆の声を上げていた。

ともだちにシェアしよう!