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《23》
「どういう事?」
心底不思議そうに勇介が問う。
「だって、大和くん…」
「わー!何でもねぇからっ!!」
慌ててお喋りな女子を遮って大声を張り上げる。
その様子を訝しげに勇介は見ていた。
「大和…?」
マズい。
勇介には、俺が男と付き合ってる事をまだ伝えられていないのだから。
いずれは伝えなきゃいけないとは思っているけれど、こんな女装姿でそんな事がバレたら、余計な誤解まで生まれてしまいそうだ。
俺は何でもないと慌てて首を振る。
「あー、そうだ!時間、大丈夫か?」
咄嗟に言った俺の言葉に、勇介が自分の時計に視線を移す。
「大丈夫…じゃないな。実は、利久に会えるかなって、マネージャーの目を盗んでこっそり抜け出したんだよね」
「え?そうなのか?」
「うん、また後で会いに行くよ」
「お、おう!」
「久しぶりに会えて嬉しかったよ」
少し照れ臭そうにはにかんで、勇介は待機場所があるだろう方向に駆け足で消えていった。
俺はホッと胸を撫で下ろす。
勇介に、いつか伝えなきゃいけないとは思うけれど、何て伝えたら良いんだろうな。
引かれたり、軽蔑されないか、心配だった。
勇介は、本当に大切な親友だから…。
俺の後ろでは、女子達が口々に感嘆の声を上げていた。
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