303 / 346

《25》

「ごめんね、ちょっと利久借りても良いかな?」 「え、俺?」 パチパチと瞬きを繰り返す俺に、にっこりと良次が微笑む。 良次の綺麗な顔に微笑まれると、無条件に嬉しくなってしまう。 結局、俺も女の子達と変わらない位単純だなと内心苦笑いして、ほいほいと良次の側に寄り添う。 まぁ、俺から寄っていかなくても、女子達が「どうぞどうぞ」と言わんばかりに俺を差し出すもんだから、結局は関係ないんだけど。 「おいで、利久」 優しい声で、良次が俺の名前を呼ぶ。 だから、呼ばれるままに、良次についていった。 友達と甘い物を制覇して、親友にも会えて、大好きな良次に微笑まれて。 ご機嫌な俺は、さっきまでの苛立ちや胸のモヤモヤなんか、綺麗さっぱり忘れていた。 それどころか、もしかしたら、何か手伝いを任せてくれるんじゃないかと期待までしていた。 今度こそ、良次の役に立てるんじゃないかって。 俺だって、ほんのちょっと位は何か出来るんじゃないかって思っていた。 「あれ?良次…、ここ、旧校舎だよな…?」 「…そうだよ」 旧校舎は相変わらず人気が無く、学園祭で賑わっている校舎とはまるで別世界の様だった。 もしかしたら、在庫とかを旧校舎に置いていて、その運搬とかの力仕事だろうか。 いつもの屯している教室の更に奥に、準備室の様な場所があった。 何故かその鍵を良次が持っていて、簡単に中に入れた。 「こんな場所あったんだな…、そういや、何か運ぶもんとか、手伝いとかあれば…」 ガチャー。 言葉の途中で、鍵が掛かる音が聞こえて、俺はそこでようやく、何かがおかしいと気づいた。

ともだちにシェアしよう!