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《26》
「え…?」
良次を見れば、さっきまでの微笑みは、もう既に消え去っていた。
「良次………?」
「何でまだそんな格好してるの?」
「え?」
冷ややかに言われて、無意識にビクリと肩が震えた。
何故か良次の声が苛立っている様な気がして、恐る恐る尋ねる。
「そんな…格好…?」
「俺は、着替えろって言ったよな?」
そう言われて、良次が女装の事を言っているらしいと気づいた。
確かに、休憩に入る前、良次に言われた気がする。
「いや、その、亜希や百合子達がもったいねぇから、そのまま遊ぼうとか何とかっつって、そのまま…」
「…ハァ」
深い溜息を吐かれて、何だか少しだけ苛立つ。
そりゃ、見苦しい格好をしている自覚はあるけど、何もそこまであからさまにしなくても良いと思う。
「何だよ…、言いてぇ事あんなら、ちゃんと言えよ…!」
正直、今日一日変な態度の良次に、戸惑っていた。
何か言いたい事があるなら、はっきり言って欲しい。
そう思って、良次を睨むと、良次もスッと目を細めた。
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