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《30》*
「あー…、それとも…」
「…っ?」
「俺の女装姿見て興奮したの?変態」
「っ…、っ…」
あの時、そんないかがわしい事を考えた訳じゃない。
ただ綺麗で、見とれて。
信じられない位の美少女だと思ったんだ。
女の子に恋愛感情を抱いた事なんてないけれど、あんな綺麗な子が居たら、好きになっていたかもしれないとか、そういった漠然とした気持ちだったと思う。
だけど、あの時の良次を思い出して、体温がぐっと上がった気がした。
これでは、返す言葉もない。
黙ったままの俺の反応を肯定と取ったらしい良次が、俺の項を撫でながら耳元で囁く。
「ごめんね。俺も女装したまま犯してあげれば良かったね」
優しい口調と仕草とは裏腹に、信じられない意地の悪い言葉を浴びせられて、ビクリと体か震える。
「や…、りょ…じ、怒って…る?」
さっきから、いつもの優しい良次とは思えない言葉に、恐る恐る問いかける。
「ああ、そうだね。こんな格好で志水や相原達を誘惑して…」
「!?してない…!そんな事してない…!」
身に覚えのない、良次の言葉に驚いて慌てて首を横に振る。
「利久にその気がなくても、あいつらはそういう目で見てるんだって事、ちゃんと自覚しなよ。襲われてからじゃ遅いんだよ?」
「そ、そんな訳ないだろ!?へ、変な事言うなよっ!」
相原と志水が、俺をそういう対象として見ているなんて、なんの趣味の悪い冗談かと声を荒げる。
俺の事だけならまだしも、相原と志水に失礼すぎる。
慌てて否定する俺の言葉に、良次が目を細めた。
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