327 / 346
《3》
ライブは大盛り上がりの中、いつの間にか終わっていた。
気がつけば勇介の姿も無く、会場からは人が徐々に捌けていく。
「ライブ、終わっちまったな…」
ポツリと呟く。
スケジュールのラストがこのライブだったから、これで学園祭は終わりだ。
初めて参加した学園祭。
中学や前の学校では、イベント事はサボってきたし、そもそも俺なんかが居ない方が平和だった。
だから、クラスメイトと一緒に何かしたり、頑張ったりするのは初めての経験だった。
自分が参加した学園祭が終わるのが、少し寂しく感じる。
小さい頃、勇介と遠足に行った帰り道みたいな感覚だ。
特別な日の夕焼けみたいな。
夏休みの終わりに見つけた蝉の抜け殻みたいな。
充実感があるのに、切ない感覚。
楽しかったから。
終わるのが、勿体ない。
そう思っていると、急に校内放送が流れる。
『間もなく、生徒によるスペシャルライブが体育館で行われます…~』
「え?」
俺は目を瞬かせる。
生徒のライブは、勇介達のライブが始まる前に終わった筈だ。
さっき百合子達がスケジュールを見せてくれたから間違いない。
そんな予定なんてあっただろうかと良次を見ると、何故か悪戯っぽい笑顔が返ってきた。
ともだちにシェアしよう!