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《5》

「え…?」 手を引かれて、最前列に導かれる。 周りを見れば、勇介のバンドのライブ目的の一般客は帰ったものの、模擬店等を終えた生徒達は続々と体育館に集まってきていた。 そりゃそうだ。 学園祭の全てのスケジュールが終わる時間帯なのだから、どの生徒も皆手があいている。 そんな時に、イレギュラーなイベントがあれば皆一体何が始まるのかと見に来るに決まっている。 「利久の学園祭の思い出の中の、1番を俺にちょうだい」 「良…次…?」 少しはにかんだ笑顔にドキリと心臓が跳ねる。 取り繕った優等生の顔でも、俺様な暴君の顔でもなく。 それは、ただ恋愛の最中にいる高校生の顔に見えた。 俺に見せているこの顔だけが、本当の良次なんじゃないかと思う。 「利久に惚れ直して貰うから、見てて」 熱っぽく囁かれて、良次の手が離れていく。 「良次!?」 俺から離れた良次は、そのままステージに駆け上がっていった。 呆気に取られる俺をその場に残して、良次は何やらバンドメンバーと打ち合わせをしている。 その中にギターを持った相原を見つけ、俺の頭の中は更に混乱状態だ。 相原は、迷惑そうな顔をして良次の話に相鎚を打ちながら、チラチラと俺を睨んでいる。 「うぅわ~、大人げねぇ~…」 「優!?」 すぐ横からした声に隣りを振り向けば、いつの間にか優が立っていた。

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