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《8》

俺がもたついてる間に、ステージ上に集まった生徒達が楽器を鳴らしたり、セッションが始まってしまった。 「あ~…、もぉ…」 何でこんな事に…。 「ほら、もう始まるぜ。時間ねぇから急ぎなんだろうけどさ、普通リハも無しにやるかぁ?即席のメンバーだろ、アレ」 「…優、良次大丈夫かな…?」 「大丈夫だろ」 「……」 「楽器はとちるかもしんねぇけど、大丈夫だよ。少なくとも良次はな」 「うん…」 優は全然心配してない顔で俺の頭を撫でる。 きっと俺を安心させてくれようとしている。 優がステージに目線を移すのにつられて、俺もステージを見上げた。 その瞬間、アナウンスと共に再び爆音が流れだす。 最近流行りの音楽で、テレビや街で流れている音楽だ。 良次がマイクを握った。 俺の握った手にも、自然と力が入る。 瞬間。 「…………え?」 何が起こっているのか分からなかった。 良次がステージの上に立っている。 まるで、芸能人の様に。 「嘘………だろ………?」 プロにも負けない声量と歌声に呆気にとられる。 一瞬、誰が歌っているのか分からなかった。 歌を歌っているのが良次だと理解して。 理解したと同時に、その甘い声に、全身がぶわりと粟立った。

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