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鬼遊び《2》
「えっと…、あ、か、さ……」
作者名を目で追って、適当な辺りで適当な本に手を伸ばし、その頭に指を掛ける。
「「 あ 」」
別の手が丁度同じ本に伸びた俺の手に重なる。
「す、すんません…!」
「いえ、こちらこそ失礼………」
思わず、手の主とお互いの顔を見て固まった。
「げ!?」
思わず潰れた蛙の様な声が口から漏れた。
そこには、俺の現在苦手ナンバー1の天皇寺の姿があった。
天皇寺も俺の顔を確認するや否や、先程の紳士的な声からは想像できない位に視線が氷点下に冷えていく。
「あ…はは…、て、天皇寺…」
「……」
「天皇寺も、買い物?」
「……」
シカト…ですよね。
正直嫌われている事は分かっているので、無視されるのは予想内の事だった。
「あ…はは、あー…、この本屋よく来んのか?」
「……お前は」
だから、天皇寺が俺の問いかけに口を開いてくれた事に、一瞬喜んでしまった。
「……うん!」
前のめりになりながら相槌を打つ俺に、天皇寺は淡々と言葉を続ける。
「字、読めんのか?小説コーナーだぞ、ここは」
「………」
一瞬でも、天皇寺と距離が縮まればと思っていた3秒前の自分が嘆かわしい。
「りょ、良次に本を頼まれて…」
俺が良次の名前を出すと、天皇寺の顔があからさまに不機嫌そうに歪んだ。
そういえば、天皇寺って良次の事を好きだったんだっけ…。
ずっと、良次の事を好きだったのに、突然現れた、しかも男の俺が良次の恋人だなんて納得がいかないのは仕方がない。
俺の事をよく思っていないのは当たり前だ。
今まで、誰かと仲良くしようなんて思った事はないけれど、良次の大事な人達とは、できれば仲良くしていきたい。
だけど、天皇寺と仲良くなるのは、どう頑張っても無理そうだなと、顔を合わせる度に思い知らされていた。
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