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鬼遊び《3》
「お前が手に取ろうとしていた本は太宰治の作品だが、良次は小学生の時に太宰は全て読み終えてる」
「え?」
「良次は一度読んだ本は読まない」
「そう…なんだ…」
いつものゴミを見る様な視線が俺を見下している。
良次の恋人の癖にそんな事も知らないのか?
そう言われている様な気がして、居たたまれなさに拳を握る。
良次と天皇寺の過ごしてきた時間や二人の絆は、俺と良次の日の浅い関係より濃密だと牽制されている気がする。
「大体、本当に頼まれた本はこのコーナーで合ってるのか?」
「………え?」
「本のタイトルは?」
「えっと、これなんだけど…」
良次に渡されたメモを天皇寺に見せると、みるみるうちに天皇寺の眉間に皺が寄る。
「…………経営関連の書籍だな」
「そうなのか?」
「ここは純文学のコーナーだが?」
「えっと…?」
他に一体何のコーナーが存在するんだか全く見当もつかない。
天皇寺が言いたい事が分からなくて戸惑う俺に、天皇寺は深い溜息を漏らす。
「……字で書いてある本って、小説だよな?」
「………………」
無言だが、蔑んだ視線が俺をバカにしている事を物語っていた。
「文芸書と経営書の区別もつかないお前に本の購入を頼んだ良次が悪いな」
「りょ、良次は悪くねぇよ…」
「ああ、良次もまさかここまで無知だとは知らなかったんだろうな」
天皇寺の言葉が胸に突き刺さる。
俺の事が嫌いなのは分かるけど、ここまであからさまだとやはり傷つく。
良次と最初に出会った時も、こんな風に冷たい態度で嫌味を言われたなと思い出す。
あの時の気持ちと重なって、酷く悲しくなった。
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