341 / 346
鬼遊び《4》
「探してる本は一つ上のフロアだ」
「え…?」
「検索したら早いが、機械の操作も出来そうもないしな。分からなかったら店員に聞け」
「あ、ありがとう…、助かった」
まさか天皇寺が助けてくれるとは思わなかった。
俺がお礼を言って踵を返そうとした時、天皇寺が目を細めた。
というか、睨まれた。
「お前はずるい奴だ」
「……え?」
「良次より強い癖に、良次に守らせて。それでも男か?」
「………お、俺は…」
「俺は、卑怯な奴や腰抜けは大嫌いだ」
「なっ……!?」
違うと反論しようとした言葉を、俺は飲み込んだ。
違う?
本当に?
俺は、もう誰かを傷つけたり、迷惑を掛けたりしたくなくて。
だから、喧嘩はもうしないって決めて。
そんで。
そんで…?
結局、天皇寺の言う様に、良次に守ってもらってるじゃないか。
良次の優しさに胡座をかいて、子供みたいに安心しきっていた。
でも、それは結果的に自分がやりたくない事を良次にさせようとしている事になるのではないか。
「俺は…………」
何も言えずに、立ち尽くす俺の言葉を待たずに、天皇寺はその場を去っていった。
ともだちにシェアしよう!