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鬼遊び《6》

「天皇寺に何か言われたか?」 「…………」 今日の出来事を、良次に言って良いものか一瞬悩む。 泣き寝入りにも、告げ口にも思えて、そんな事は嫌なのに。   「…………ん?」 だけど、優しく良次に促されて、張っていた気が緩んだ。 「嫌いだって…、言われ………っ…」 言葉にすれば嗚咽が漏れそうで、息を呑む。 「良いじゃねぇか、勝手に嫌わせときゃ」 「良くない………、良次の大事な人には、嫌われたくねぇ………」 「ははっ、か~わぃ…」 何が可笑しいのか破顔する良次の肩を小突く。 「ごめんごめん」 ちっとも悪くなさそうに良次が謝る。 「あいつは利久の事を誤解してるだけだよ」 「誤解?」 「そ…」 首を傾げる俺に良次が頷く。 「利久が、こんなに可愛くて健気で、優しくて繊細だって知らないんだな~」 可哀想なヤツ。 そう笑う良次を、俺はジト目で見つめる。 誤解しているのは天皇寺ではなく、良次の方なのではないかと疑いたくなる。 そんな俺に構わず、良次が続ける。 「あいつは俺の事が好きだから」 良次の言葉に心臓が跳ねる。 良次は、天皇寺の気持ちに気づいていたのか。 俺が、聞こうとすると予想外の言葉が続く。 「俺が好きになるものは必ず好きになる」 「…………………は?」 良次の言葉の意味が理解出来なくて瞬きを繰り返す俺に、 「だから、あいつはずっと利久を誤解してれば良い」 そう、意味深な事を言って良次は俺の肩を抱く手に力を込めた。

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