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第13話
1人か。なんて一護はがっかりして風呂へ。
湯船に浸かっても良かったがシャワーだけで済ませた。なんだか1人になるのが寂しかったのだ。
タオルで身体と髪を拭いて、借りた恭平のシャツを手にするとフワリと彼の臭い。たぶん、柔軟剤の香りなんだろうけど、いつも恭平に近付くと香ってくる匂い。
素肌に身につけると恭平に包まれているみたいで安心する。
自分でも不思議だった。10年もすれ違っていたのに出会って直ぐにこんなにも気になって離れたくないとか思ってしまうんだと。
風呂場から出て恭平の居るキッチンへ。
「なん?もう上がったと?ゆっくり浸かれって言ったやん」
一護の足音に気付き振り向きそう言ったが自分のシャツを着ている一護を見て固まるように見つめると「これが噂に聞く彼シャツってやつか」なんて言う。
「は?何言って」
彼シャツという言葉に一護も照れてしまう。
「似合うやん」
恭平は料理の手を止め一護の前に立つ。
「似合う言われても」
「それとちゃんと髪は拭けよ風邪引くばい」
一護の首にかかるタオルを取ると恭平は髪を拭く。
「もっとゆっくり浸かって良かったとに遠慮か?」
恭平は髪を拭きながらに言う。
「違う……なんか寂しいちゃもん、恭平一緒やなかし」
一護の言葉に髪を拭く手が止まり「あー!!もうこの天然小悪魔!人が人が我慢すればそうやってええ」と恭平はシャウト。
「へ?なん言いよっと?」
小悪魔とか何だろ?って一護は恭平の気持ちも分からず首を傾げる。
「うっさい!ばかちんめ」
恭平はぎゅうと一護を抱きしめる。
「今はこれで勘弁しちゃるけん」
本当は今すぐ押し倒したいのを我慢しているのだが一護が無防備に誘っている感じでしんどい。
抱きしめた後に「よし!飯作るぞ、手伝え」と一護の頭をグリグリ撫でた。
◆◆◆
恭平は料理も上手かった。そして、風呂に入ると言うので一護が片付けをする事にした。
片付けを早めに終えて、テレビでも見ながら恭平を待っていようと思ったけれど、何故か寂しい。こんなに寂しがり屋だったかな?って自分でも不思議だ。
だからつい、風呂場へ。
すりガラスの向こうの恭平に「恭平」と声をかける。
「どーした?」
シャワーの音がしていたのだが声をかけるとシャワーの音が止んで恭平の声がした。
「まだ、上がらんと?」
「何?どーしたんだよ?」
一護の声があまりにも寂しそうで恭平は浴室のドアを開けて声をかける。
「ん、何か、寂しいけん」
その言葉にぶはっと吹き出しそうだった。
ドアを開けるとちょこんと座っている一護が。何だこの可愛い生き物は!と鼻血出そう。
「わ、わかった直ぐに上がるけん待ってろ」
何でこんなに寂しいのか。きっと、父親の話を皆がしてくるから。自分が知らない父親の話。
恭平は父親と自分より沢山話している。今日会った人達も。皆、自分が知らない父親を知っている。
恭平が慌てたように風呂から出てきて身体や髪を拭いている間、じっと彼を見ていた。
「あ、あんま見るな照れる」
恭平は顔を少し赤らめて言うけれど、一護を見て微笑んでくれるから安心できる。
服を来た恭平にしがみつくように抱き着いた。
「おわ!なんだよ、俺を試してんのかよおお!!」なんて恭平が叫ぶけどもこうしていると安心できるから離れられない。
何も言わず抱き着いてくる一護をしょうがないなあっていう顔をして引きずるように連れていく。
寝室に連れていき「おら、寝るぞ」と声をかけてシーツのなかに2人で入る。
しがみついて離れない一護をギュッと抱き締めて「ホント甘えただなお前、こんなに可愛いかったんか?」と声をかける。
「だって、恭平といると安心するとやもん」
「あー、もうそがん可愛かことばっか言うてからくさ、どげんされたかとや?」
「ギュッってされたい」
「しとるやろ?」
「もっと」
「はいはい」
恭平は更に力を入れる。
「恭平はさ……何ば話よったと?」
急に話始める一護にキョトンとなる恭平は「誰と?」と聞く。
「オヤジ。俺はさ……あんま話してないけん、ここ10年のオヤジはよう知らん。高校に入ってからも入れると結構長い時間話しとらん気がする」
一護の声は寂しそうで消えそうだった。
「ああ、最近おじさんの話ばかり聞くけんか?それで寂しくなって甘えたなんか?」
まあ、なんとなく急な甘えたの理由は想像ついていた。本人の口から聞くとやはりなって思う。
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