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第14話

「一護はファザコンやけんな」 「は?ファザコンやなかぞ!!」 恭平の言葉に反論。 「なんや?自覚しとらんかったんか?」 「自覚もなんも、俺はファザコンやなか!!」 鼻息荒く言い返す一護を恭平は抱き込むと「はいはい、ファザコンじゃございません!お前もう寝ろ、明日早いっちゃっけん」と背中をポンポンしながら寝かしつける。 「ふざけんな恭平、子供じゃなかぞ」 腕の中で暴れるが「いい子やけん眠りんしゃい側におるけん」と背中ポンポンされる内にウトウトしてくる。寝るもんかと思うけれど恭平の手のひらが温かいし抱き締められている安心感でいつの間にか眠ってしまった。 「ホント、困ったちゃんばいお前……このまま襲っちゃろうかい!ちくしょう」 腕の中で子供のようにスヤスヤ眠る一護を抱き締めて恭平も眠りについた。 ◆◆◆ スマホのアラームで目が覚めた一護。 「おはよ」 恭平の声がする。 目をあけると見下ろされている。 「寝顔可愛いな一護」 「んー」 一護は目を擦りながら起き上がる。 「ほら、コーヒー」 「んー」 唸りながら出されたカップを受け取る一護なのだがきっと、何を受け取ったか分かっていない。無意識に飲んで「あつ!!」とカップを落としそうになった。 「一護」 恭平は慌ててカップを押さえる。 それで完全に目が覚めたのか一護は「いま、何時?」と聞く。 「3時」 「あ!!仕込み」 一護は慌てたようにベッドを降りようとするが恭平が「こぼれるって」と彼を押さえた。 「鈴木さん達がやってくれてるよ」 「しまったあ……」 鈴木に丸投げみたいになって一護は反省。 「鈴木さんが一護を休ませてやれって言ってたんだよ、お前オープンからあまり休んでないっちゃろ?」 「それは鈴木さんも同じやけん」 「鈴木さんタフやけん、大丈夫!それに催事慣れとるけん、一護は初めてやろ?先輩に任せんしゃい」 恭平にそう言われてもなんだかムズムズする。 「まあ、とにかく支度しようか?」 「えっ?恭平もいくと?」 「当たり前やろ?」 「でも、恭平は百貨店の人間やけん後からでも」 「今は十五夜のスタッフ」 恭平は笑って一護の頭を撫でた。 ◆◆◆ 支度をして恭平の部屋を出た。 まだ夜の雰囲気のままで少しひんやりしている。昼間はあんなに暑いのに不思議だ。 恭平の部屋から百貨店は本当に近いから助かる。 「こんなに早く入れるんや百貨店って」 従業員入口で恭平に鍵を開けてもらう。 「入れるよ、特に惣菜とか作ってるとこは早い。パン屋もな」 考えてみるとそりゃそーだと思う。デパチカと呼ばれる食品売り場には惣菜もスイーツもパンも置いている。作られたものが配送されていると思っていたけれど、中で作っているんだと百貨店に出入りして知った。 ちゃんと厨房もある。 中には警備員が「泉ちゃん早いやん?あ、催事か」と恭平に話しかけてきた。 「うん、今日からパンフェス、で、こっちが十五夜の店長」 「十五夜!そうか!十五夜入るんだよね?後で買いに行くから」 目をキラキラとさせて一護に挨拶する警備員。 一護も頭を下げる。 警備室を通り過ぎて「恭平、店長ってやめろ」と服の裾をツンっとつまむ。 「お前、店長だろ?」 クスクス笑う恭平。 「違う、店長は母ちゃんやし!俺はパン焼く人!」 「ばーか、後継ぎなんやけん、時期社長やろ?」 「そげんデカい会社やなか!店やし!」 「俺が一緒にでかくしてやるよ、十五夜を」 恭平は一護の背中をポンと軽く押す。

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