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第18話

◆◆◆ 午後から予約番号に切り替わった。 追加で作ったパンも夕方には無くなってしまい。鈴木が早めに店に戻り明日の準備をすると言う。 売上は催事で1位だと恭平が教えてくれた。 まだ、閉店ではないから抜かれる可能性あるんじゃない?と言っても抜けない数字だからとドヤ顔された。 「一護ちゃん、あとはうちらはで片付けるけん、店に戻りぃよ、仕込みあるっちゃろ?」とみっちゃんに言われた。 「そうだな、帰るぞ、一護」 恭平に腕を掴まれ「お先しまーす」と外へ連れ出された。 「恭平!」 催事は良いのかと言ったけれど「彼女らが全部やってくれるって、売り切れもちゃんと説明してくれる」と言って腕を離さない。 仕方なく恭平に連行されて歩くがどうも彼の部屋に向かっているようで「店戻るんじゃ?」と聞くと「とりあえず俺んちこい」と引っ張られた。 ◆◆◆ 「汗かいたろ?とりあえず風呂入れ」 「う、うん……恭平は?」 「お前、飯食ってないだろ?用意してやるよ」 恭平に言われてそういえば何も食べていない事に気付く。 「気づかなかった……腹減ってないみたい」 「一護、緊張してたからな」 「あれ?みっちゃん達は休憩したの?」 「なん?お前マジで余裕なかったんやな?彼女らはちゃんと1時間半休憩とってたぜ?あと鈴木さんも」 「そうなの?」 「そうなんだよ」とポンと頭に手を置かれたらなんか急に力が抜けた。 「おわ!一護、お前大丈夫かよ」 咄嗟に恭平が抱きとめてくれた。 「うん、緊張が今とけた」 「なんやそれ」 恭平は笑う。 「ありがとう恭平」 「なにが?」 「色々と」 「略すなよ」 「恭平……」 「うん?」 「よしよしってして」 一護は恭平に抱き着く。 「よしよし、頑張ったな」 恭平は一護を強く抱き締めて頭を撫でる。頭を撫でられたら我慢出来なくなって涙がじわっと出てくるから彼の胸に顔を埋める。 「ぼくのおとうさんはぱんをつくってます。とてもおいしいです。ぼくもおおきくなったらおとうさんみたいなさいきょうなパンやさんになります」 いきなり恭平に言われて一護は顔を上げた。 「恭平、なんで知ってると?」 「おじさんが手帳に挟んで大事そうに持っとった。一護、ちゃんと最強のパン屋さんになったやん、すごか」 「違う……父ちゃんの実力やん」 「ううん、一護もだろ?おじさんが頑張ったのは一護に恥じない為やもん。一護が言うようにおじさんも最強のパン屋さんになるって頑張ってた」 「お客さんも言ってた、俺と仕事したいって……催事やりたいって」 「うん、俺も聞いとった。おじさん一護の話しかせんもん」 「俺は、なんで……父ちゃんと話せんやったとかな?もっと話せば良かった、変な意地はらんで素直になれば良かった、そしたら今頃一緒に最強のパン屋さんできたとに」 涙が零れる。 喉の奥が熱くなってちゃんと息ができなくなって、恭平の胸顔を埋めた。 小さい子供みたいだなって自分でも思うけど、でも涙が止まらない。 見知らぬ人から父親の話を聞き、自分の話ばかりしていたと聞いて、なんで父親が仕事の方が良いのだと思い込んでいたのかと後悔した。変な意地と誤解でとても大事な時間を失ってしまった。 生きている時に一緒に仕事をしたかった。 一緒に催事に出てお客さんと話したり出来たのに。 本当に自分は馬鹿だと思う。 都会で腐った時間過ごさずに済んだのに。 「いっしょ……に働きたかった……」 一護は子供みたいにわんわん泣いてしまった。 恭平はギュッと抱き締めてくれて「お前、今まで我慢してたんだろ?葬式でも泣かなかったってオバサンや鈴木さんが心配しとった、いっぱい泣いて良かよ……俺が側についとるけん」頭を撫でられた。 泣いていいんだって分かったら涙が止まらなくて、たくさん泣いてしまった。

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