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 結局帰れたのは今日中だったけど、外は真っ暗で月の欠片が雲の隙間からほんのちょっと見えるくらいな感じの中を重い足取りで歩く。 「シャワーは明日にしよ、とにかく寝よう」 なんて呟く声にもハリがない。 今なら幽霊に間違われてもおかしくないな、と笑いたいけど笑えない。  ボーっとしながら藍色のジーパンの左ポケットからキラリと輝くものを出し、見つめる。 それは今日の残業代だと、カミナシ……神戸店長からいただいた500円玉だった。 マニ……この街の発展を担う中臣グループの専務だという根切さんに脅されてから、より手をかけてもらっている。 時給なんて20円上げていただいたし。 「店長の方が大変なのにな」 本当に色んな人たちに支えられて生きているんだなと実感させられる。 もちろん彼らにもね。 料理作ってくれたり、一緒にパン食べてくれたり、髪切ってくれたり、セックスしたり……な、なに言ってんの俺! でも、気持ちいいんだよな……ああ、今日の俺、リミッター外れた。  もう夢のようだった1週間を思い出し、疲れた頭を補完する。 すると、聞き慣れた木琴音が流れたから、びっくりしながらも慣れた手つきで取り、耳に当てた。

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