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4.「お前等、幼馴染というより母親と駄々っ子みたいに見えるよなぁ」

 太陽が明るく照らす空の下、気だるげに登校する学ラン姿の布知高校の学生達。皆、パーカーだの改造制服だのと学校指定の着方を守ってはいないものの、門に立つ教師に挨拶をする。 『一昨日、ありがとうな』 『従姉妹、すげー喜んでた』 『俺にそんなセンスがあったんだ、って驚かれたわ』  日高は登校中に伊宮へそんなメッセージを送っては携帯を閉じ、大きな欠伸をしながら校門へ到着する。 「おはよう日高。でっけぇ欠伸だなー、夜更かしか、AVの見過ぎか」  ボサボサな黒髪に無精髭を生やし、だらしなく緑の学校指定ジャージを着用した日高のクラス担任、松平。愛称はまっさんと生徒達に愛されている。 「はよ、まっさん。ちげーよ、昨日従姉妹の誕生日だったから世話してたんだよ」 「おうおう、見た目によらずいい兄ちゃんだなぁお前は。目つきは仕方ないとして、髪色ぐらいなんとかしたらどうだ?」 「それは、俺も分かってんだけどよ……」 「ん? なんか変えたくねぇ事情でもあんのか?」 「そんなんさ!」  と、日高の上へと飛び乗りながら二人の会話へと割り込んでくる者がいた。 「俺ちゃんとのペアヘアカラーじゃなくなるやもんなー!」 「違ぇよ」 「ゆっちゃん、即答ひどい!」 「おーおー、幼馴染特有の幻想だな」 「まっさん、うるさい」  ほんの少し長い黒髪を一つにまとめ、真ん中分けにされた前髪の左側だけに鮮やかな青色のカラーが入っている。まつ毛が長くパッチリとした目だからか、顔立ちや体型は男だと言われなければ綺麗な女性だと勘違いしてしまう。日高の幼馴染、早乙女遥。 「いいから降りろよ、ハル」 「いやや。俺ちゃん軽いんやし、ゆっちゃんが教室まで連れてってーや」  早乙女が目をキラキラ輝かせながらお願いするも、日高は「断る」と言って無理矢理早乙女を降ろした。早乙女は突然の事で受け身が取れず、盛大に尻もちをつく。 「あいったー! ゆっちゃん痛いやんかー!」 「勝手に乗ったお前が悪いんだろ?」 「ぶー」 「膨れても無駄」 「……。お前等、幼馴染というより母親と駄々っ子みたいに見えるよなぁ」  まっさんの言葉に周囲にいた学生達が、一斉に頷く。 「駄々っ子とはなんや駄々っ子とはー」 「そうやってさっさと自分で立とうとしないからだろ、っと」 「ふふん、あんがと」  日高が早乙女の腕を掴み、無理矢理立ち上がらせる。引っ張られた早乙女は尻の汚れを払い、「そういや、ゆっちゃん」と話を持ちかける。 「一昨日は行けへんくて、ごめんやで?」 「別に。仕事だったんだから、しゃーねーだろ? お前もお疲れさん」 「うん! で、オススメした店入れたん? ちゃんと従姉妹ちゃんへのプレゼント買えたん?」 「おう、買えたぞ。ほれ、こんなに大喜びだ」  日高が携帯を弄り、早乙女へある写真を見せた。そこには可愛らしいツインテールの少女が、日高の贈ったプレゼントを抱えて笑っているものであった。 「へー、良かったやん。店員さんとちゃんと話せたんやね。ゆっちゃん、ああいう所苦手やから話せずに適当に選んだんやないかって心配やったんやから?」 「あー、いや。俺だけじゃなくてよ。ダチと選んだ。ほとんど、そいつのおかげで店員さんに選んでもらえたんだ」  日高の言葉に早乙女は首を傾げる。 「? ダチ? ゆっちゃん、俺ちゃん以外にそんな適任のダチいた?」 「そういや、お前には紹介してなかったな。そいつとは最近ちゃんと知り合ってよ」 「……へぇ」 「おぅ、そろそろ教室行こうぜ。俺ちょっと寝てぇーし」  日高は彼にそう話し終え、歩き始めるも早乙女は目を細めたまま、ほんの少しだけ何かを考える。そして口元にほんの少しだけ笑みを見せながら、「ねぇ、ゆっちゃん」と彼の元へと走り思いっきり抱きついた。 「なんだよ」 「その子、俺ちゃんも友達になりたいな」 「あ? なんでまた」 「だってだってだってー! ゆっちゃんが俺ちゃんの知らないとこで知らない子と楽しくしてるの嫌なんやもーん! 仲間外れは無しやで!」  そんな彼の言動が心底「うっぜー」といった感情を隠さず顔へ出す日高であったが、溜息を一つ吐きながら早乙女の抱きつく手を掴む。 「一秒で離れたら、約束取り付けてやる」 「ほい離れた!」  早乙女は日高から離れると、ニコニコと微笑んでいた。

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