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10.「今頃、何してるのかな」
GW最終日。
「チャーハン+餃子セットおまち!」
「日高、コレもな!」
「うっす!」
紅蓮はGWなのもあって、通常の土日よりも多くの家族連れで賑わっている。
そんな混雑の中、日高と大将は二人だけで店を回していた。
そうして、ようやく店の混雑も落ち着いてきた頃、日高と大将は揃って「ふぅ」と一息ついた。
「お疲れさん、日高。休憩していいぞ」
「いや、溜まった皿を洗っておくっす」
「えー、休憩してこいよー。ほんっと見た目によらず真面目なんだから」
「最後のは余計っすよ」
日高は大将を睨み怒気を含ませた声で言い、洗い物を始める。
大将は「わりぃ、わりぃ」と苦笑いを見せながら、洗い物をする日高に「そういえばよぉ」と話しかける。
「この前早乙女君と来てた、あの男の子。どういった知り合いなんだ?」
「あぁ、アイツは」
日高は大将の質問に出てきた男の子、伊宮について話す。話せば大将は「へぇ〜、そんな事が」と笑いながら聞いていた。
そんな彼に「そんな気になるっすか?」と日高は尋ねる。日高からの質問に、「そうだなぁ」と大将は少し寂しげな顔で笑う。
「なんか……アイツに似てるなぁって思ったんだよ」
大将の言葉に、日高は目を伏せる。
「それは俺も……思いました」
彼の同意に大将は「なんだお前もか」と、安堵の表情を見せる。日高はそんな大将を横目に見ながら、洗い物に集中する。
が、頭の中では大将と同じ誰かを考えぬように、彼の事を考えていた。
「(伊宮は今頃、何してんだろ)」
◇◆◇
「よし、こんな感じでどうかな?」
「……」
「良かった!」
日高が考えていた伊宮は、蒲と共にガーデニングを楽しんでいた。植えた種の上へ、優しく土を被せる。
「ねぇ、これはいつぐらいに咲くの?」
「……」
「へぇ、六月から九月かぁ。なら、結構早く見れるね。楽しみだなぁ」
伊宮がニコニコと自分が植えた場所を見ていると、蒲が彼の肩をトントンと叩く。
「え? なぁに?」
「……」
「えぇ!? 寄り道が多いのは、その、友達と遊んでるからだよ!」
「……」
「嘘じゃないってばー! 本当に友達! 彼女じゃない!」
「……」
「な、なんで蒲さんは残念そうなのさ」
蒲が何故か落ち込んでいるのを不思議に思う伊宮であったが、心の中では。
(彼氏、にしたい人はいるけどね)
と、今頃バイトに励んでいるであろう彼の事を思っていた。
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