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番外編 日課

 雲一つない晴れやかな朝。  ほんの少し年季の入ったアパートの一室から、美味しそうな匂いが漂っていた。 「ふわぁ」  制服をまとった日高は大きな欠伸をしながら、卵焼きとソーセージを焼いている。チンと電子レンジの終了音が鳴り、日高はそこからタッパーに入った酢豚を取り出す。バイト先からの賄いのあまりだ。  日高はそれと卵焼き、ソーセージを自身の弁当箱へ詰めていく。もう一段ある弁当箱へは、炊飯器でホカホカに炊かれたご飯をぎゅうぎゅうに詰めた。  弁当箱をまとめ、鞄に入れ、彼は写真を二つ並べられた前へと座る。  男性の方は日高のように目つきが悪くムスッとしているが、女性の方はそんな彼と違って優しい瞳を持ち、花が咲いているかのように笑っている。 「父さん、母さん、行ってくる」  これが、彼の日課である。

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