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11.「友達だっつってんだろ」
ゴールデンウィークが過ぎ。
「おらよっ!」
「ゲェ」
季節は短い春からジリジリと夏へと近づいていく。
「……」
「ぐっ」
そんな中、伊宮は気付いてしまったのだ。
「これで!」
「終わりだ」
「「ぎゃん」」
二人が、喧嘩の強いヤンキーである事を。
日高と早乙女が同時に、二人のチンピラの顔に強烈なパンチを喰らわせ、倒す。彼等の周囲には二人にやられたチンピラの集団が倒れている。二人は一喧嘩終えてハイタッチをするも、伊宮だけはその状況に苦笑いしか出来ないでいた。
なぜチンピラに絡まれていたのかというと。
日高と早乙女と待ち合わせをしていた伊宮に、このチンピラ共がちょっかいをかけようとしていたのだ。
しかし。
「ちょっとオニーサン達。俺ちゃん達の友達に、なんや用なん?」
「あぁ? 友達? なるほど、テメェ等のカモか! なんなら俺達にも分け、てんっ!」
「友達だっつってんだろ」
日高の足蹴りを起に、結局喧嘩沙汰となってしまい、今に至るのだ。
伊宮は一度深呼吸してから、勝利を祝う二人の元へと向かった。
「日高君、早乙女君。ありがとう、怪我してない?」
「おうっ! 大丈夫やで! つーか、せっちゃんも大丈夫? 怖なかった?」
「うん、二人が助けてくれたし」
「そかそか。……」
早乙女はそう言って、ジィと伊宮の制服を見る。
「ん?」
「いやな、やっぱりその坊ちゃん制服は目立つなぁ、てな」
そう、伊宮は平日に門限や二人と遊ぶ時間を考えて、放課後は制服を着替えずに待ち合わせ場所に来ているのだが。そのお坊ちゃん制服は、良くも悪くも目立ち過ぎるのだ。
「せっちゃんが俺ちゃん達と遊ぶの楽しみにしてくれてるん、めちゃ嬉しいけどさぁ、やっぱりこれからは着替えてから来たらどうなん? 俺ちゃん達もいつでもすぐ来られへんしさぁ」
「うーん、でも時間がなぁ」
「伊宮の学校まで迎えに行くか?」
悩んでいる伊宮に、日高がそんな提案をした。その提案に伊宮は頭の中で、彼等が自身の校門の前で待っている姿を想像した。
あまりにも、目立ち過ぎる。今回は悪い意味で。
「さ、流石に学校は申し訳ないよ!? 着替え、そう! 遊ぶ日に着替え持ってくるから! それできっと大丈夫だよ!」
伊宮は慌てて日高の意見を傷つけぬように否定し、新しく案を出すと、それは二人も納得したようで伊宮に頷いた。彼は安堵のため息を吐き、「それじゃ、行こうか」と二人に声を掛けて足を動かそうとした。が。
「聖司様!」
「えっ?」
グイッと誰かに身体を寄せられると、身体は日高と早乙女から離れてしまう。一体何が起きているのか、伊宮自身にもそして日高や早乙女にも分からず、目を丸くするのみであった。
「聖司様! お怪我はありませんか!?」
伊宮はこの声に聞き覚えがあった。おそるおそる顔を上げると。
「京さん!?」
伊宮の隣には、彼のメイド京がいた。京は伊宮の身体をギュッと抱き寄せて、入念に彼のボディチェックをする。
「お怪我も触った感じは問題ありませんね。財布は? ちゃんと今日差し上げたお小遣いはありますか? 他に何か盗まれたりは?」
「え、あの、京さん? 僕は何も」
「もう大丈夫です。私と蒲があの者達からお助けしますからね!」
「だから、何もされてないよ! あの二人は僕の」
「あぁ、なんとお優しいことか。貴方を虐める者にも慈悲を与えるのですね! それこそ、次期当主! ですが……蒲!」
京は伊宮の話を聞かずに、指をパチンと鳴らすと、いまだに呆然としている日高と早乙女の背後に蒲がぬぅと姿を現す。
「うわ、なんや!? ゴリラみたいな奴やなぁ!?」
「……」
「……やんのか?」
「ゆっちゃん、流石にゴリラはきついでぇ」
蒲に対して喧嘩の態勢に入る二人。そんな光景に、伊宮は普段なら聞けない大声をあげる。
「だから! 二人は友達なんだってばぁぁぁぁあ!」
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