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第9話
二人で雨宮の淹れてくれたコーヒーを飲んだ。店には頻繁に通ってたけど、向かい合って一緒にコーヒーを飲むのは初めて。
「そういえば、ヤマ先、覚えてる?ヅラにしたらしいよ」
「え!?そうなの!?山下先生、あんなにフサフサしてたのに!」
誤魔化すみたいに始めた高校の時の思い出話。
「そうでもないよ。生え際とか、結構ヤバめだったじゃん」
「ふっ!ハハッ!どこ見てたの!」
「いや、あれは見るだろ?」
「くくっ。知らなかった」
雨宮、爆笑してる。笑うと幼くなるんだな。笑顔、可愛い……
もっと見たくなり、話題を続けた。
「国語の先生もヅラでよくズレてたっけ」
「ぶはっ!ハハッ!」
「何度、『ズレてますよ』って言いそうになった事か」
「ぶ、くくっ!あははっ!そこは言わないであげて!」
思えば、高校の時はただのクラスメートで、ほとんど話した事もなかった。それでも、告白してくれたのに、俺は…………
「雨宮、恋人いる?」
思い切って聞いてみた。
「ぶ……ゴホゴホッ!!」
多分、俺の思いもよらない言葉に雨宮は動揺、咳込んだ。
俺はあの日、突然の告白に驚いて、雨宮を傷つけた。『男同士』、最も酷い言葉で。
俺を無視したり、距離をおいてもおかしくないのに、再会後、雨宮は普通に接してくれた。
雨宮の事、可愛いなって思う。笑った顔や照れた顔を見るとキュンとする。毎日、時間を作ってカフェに通うのは……
他の男に笑顔を見せるだけでモヤモヤするのも、彼氏がいるかもしれないと気になって仕方がないのも全部……
「………………今、好きな人いる?」
また赤くなった雨宮を見つめる。
許されるなら、もう一度向き合いたい。
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