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第10話

 雨宮は即答しなかった。  外は激しい雨。まるで修羅場のBGMみたいに惜しみなく、鬱陶しい音を鳴らす。  見え隠れするのは動揺の色。長い沈黙の後、雨宮は顔を上げた。 「…………いる」  それはあまりに小さな声で、外の雨音に消されてしまいそうな位だった。  やっぱりか……  雨宮の言葉に落胆する。 「カフェの人?」  我慢出来ずに聞くと、戸惑いながら雨音は頷いた。多分、距離の近いアイツだろう。 「だ、だから!昔は……その……色々あったけど、気にしないで、これからも普通の友達として……」  雨宮の言葉を聞きながら、思わず苦笑いする。 『普通の友達』  俺はそんなものになりたかったのか……  あの男はちゃんと雨宮を大事にしてるんだろうか。  ………………でも、男同士で付き合えるなら。  人目を気にしない強さはある。見た目はチャラチャラして派手だけど、器は多少大きいのかもしれない。  この部屋に来た事はある……?恋人なんだから、二人きりになって……  キスとかそれ以上だって……    クソ……!  胃がムカムカしてきた。 「…………星名?」  何も答えない俺に、雨宮が心配そうに聞いてくる。 『雨宮。冗談、やめろよ!男同士で『好き』とか意味分かんないんだけど!ビックリしたじゃん。そ……それとも、罰ゲームか何か?』  ふと思い出したのは、自分の昔言った酷いセリフ。そうだ。俺がお前に言ったんだ。『対象外』だって……

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