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第2話
今日の診療時間は午前中で終了している。
それは分かっている。
だから、診療所の表じゃなくて裏口から入る。
ガチャリと裏口のドアノブを回し、目的の人物の名前を呼んだ。
「おい、工藤!いるか?」
「先輩、不法侵入ですよ」
後輩の工藤がカップ麺を啜りながら文句を言ってきた。
工藤は中学、高校時代の後輩。
いちいち文句を言うけど、やることはしっかりやってくれる、頼れる後輩だった。
「急患だ。こいつ、看てやってくれ」
なるべく雨に当たらないようにスーツとYシャツの間で抱きかかえてきたけど、体の芯から冷えているのか、まだ冷たい。
工藤は一目こいつを見ただけで目が変わった。
「診察台に乗せてください」
診療所と母屋は渡り廊下で繋がっている。
急いで渡り廊下を通って、診察室に入る。
診察台の上に乗せると、俺の体温がなくなったことによる体の震えがよりひどくなった。
工藤が手袋をはめながらやって来た。
血圧やら体温やら、一連を調べていく。
「こいつはひどい。低体温症になってる」
「治るのか?」
「まだ軽度で済んだからよかったけど、あと少し遅かったらウチでも手に負えなかったです」
「俺にできることがあれば言ってくれ」
「まずは保温するので、着衣を脱がせてください。それから、タオルで体を拭いて、これを着せて。それも終わったら、この毛布で包んであげてください」
「分かった」
ランニングと下着を脱がし、工藤から受け取ったタオルで全身を拭いてやる。
ちょっと体に触れるだけでも氷のように冷たい。
一滴の水滴も残さないようにしっかり拭き取ってやって、病衣を着せた。
大人用だからブカブカだ。
でも何も着ないよりはましだろう。
それから毛布でぐるぐる巻きに包んでやった。
少し温かくなってきたのか、震えが治まりつつあった。
「先輩、これをこの子の脇の下に入れてあげてください」
工藤の姿が見えないと思ったらタオルで包まれた湯たんぽを用意してくれていた。
少し毛布を剥ぎ、脇の下に二つ湯たんぽを入れて、また毛布でぐるぐる巻きにしてやった。
「先輩、明日の仕事は?」
「土曜だから休み」
「それなら今日はウチに泊まってください」
「いいのか?」
「この子、残していくのは無理でしょ?」
「…助かる」
「客間に布団敷いたんで、ゆっくりしてください」
「サンキュ」
俺の腕の中が安心できると思っているのか、ぐっすり寝ている。
それに俺まで安心して、疲れがどっと押し寄せてきた。
あっという間に眠りの淵に落ちていった。
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