5 / 179
第5話
side晴海
(ん…顔に何か…?)
「晴くん、風邪ひくよ。部屋に行こう」
帰って来たのか…。
「あぁ凪、お帰り。僕、いつの間に寝たんだろう?」
無防備に寝付くなんて…。
凪が長身を屈めて僕の顔をのぞきこむ。
「よく眠ってたみたいだけど、夕食は?」
心配そうにじっと僕の顔を見つめる。
僕よりも色素の薄い瞳と髪はまるで王子様のようだ。
(兄弟なのに僕とはずいぶん違う…。)
「何だか疲れて…食欲ない」
「母さんが用意してくれた食事は明日にしようか」
「うん、そうする」
凪の顔を見ていられない。逃げるようにソファーから立ち上がったせいか、ふらついてしまった。
「晴くん、危ない」
ぎゅっと抱きしめられた。心臓が飛び上がり、顔が赤くなる。
「ありがとう。もう寝るよ」
顔を見られないように凪の胸をそっと押し返し、僕は自室にむかった。
ともだちにシェアしよう!