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第14話

side凪 中学二年生も終わる頃、僕の身長は175センチ程に伸びていた。体が大きくなるにつれ顔つきも男らしくなり、以前のように揶揄されることもなくなった。 拓己の背は10センチ程伸びたがこちらは男くさくならず、相変わらず綺麗という言葉がぴったりだった。 拓己とはいつの間にか話をするようになっていた。 話といっても 暇、つまらない、腹減った…意味のないものばかりだがコミュ症気味の自分には十分なほどだった。 中学三年生になり、公立高校に進学するか兄の通う私立高校に進学するか選択する時がきた。 僕は兄と同じ学校に通いたい一心で、今までにない位猛勉強した。もちろん合格した。 (晴くんと通学かあ。ふふふ) 僕は少し浮かれていたのかもしれない。 放課後、三階のいつもの廊下からぼんやり鯉を見ていた。 まだ寒いせいか、姿は見えるものの動きが悪い。 鴨は池の脇でじっとしている。 (…帰るか…) 再び視線を落とすと、中庭に人影が見えた。 拓己だ。 普段こんな時間に生徒は立ち入らないのに。 珍しい、誰かと話をしているようだ。 大きく手を振り上げている。 争うような声が聞こえ、拓己はしゃがみこんだ。 僕は鞄を持つのも忘れ、拓己の元へと走った。 「拓己」 拓己の肩が小刻みに震えている。 僕を見る拓己の目から、涙が零れた。 何があったのか解らない。でも震える体をぎゅっと抱き締めていた。

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