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第15話

side凪 泣き続ける拓己を脇から支えるようにして向かったのは、拓己の自宅だった。 僕の住む家とは学校からちょうど反対側にあった。 デザイナーズマンションというやつなのか、エントランスはおしゃれで、コーヒーショップまで入っている。 その14階に拓己は住んでいた。 僕は慣れない高さに辺りをキョロキョロしてしまう。 拓己のあとに続き、部屋に入った。 ベッドに本棚、勉強机、作り付けのクローゼットとス ッキリしている。 とてもじゃないが制服を雑に着ている人の部屋とは思えない。 しゃくりあげる拓己をベッドに座らせ、おさまるまでその隣でじっと待った。 拓己は鼻をすすり始めた。 「俺、振られたんだ…」 (そういえば好きな人がいるって…) 「…付き合って欲しいって言ったらOKしてくれて…」 「うん」 「で、ちょっとだけデートみたいなことして…」 「うん」 「…でも、サヨナラって言われて…」 「…うん…」 「…うわあん」 再び泣き出した拓己に抱きつかれ、背中をさすった。 そして泣きつかれて拓己はそのまま眠ってしまった。 黙って帰るわけにもいかず、僕は拓己を抱きしめたまま一緒に眠りに落ちた。 口が気持ち悪い。ぬるぬるする。 拓己が僕にキスしていた。 「わっ、な、何してるの…?」 思わず制服の袖で口を拭う。 「いいだろ。減るもんじゃないし」 「減る!そういうのは好きな人としろ!」 「…キス位してみたかった…」 「え?」 「キスもしないで振られちゃったんだもん…」 拓己の目に涙が再び溜まる。 だがそれは僕と関係がないことだ。 受け入れる必要はない。 「しょうがないな」 だが、僕はその行為を容認してしまった。 拓己に同情したのだ。 このことで、僕は後から後悔することになるのだ。

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