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第32話

side晴海 二人と別れていつの間にか家に着いた。 いつものようにただいま、と声を出し自室にこもる。 今日もまた凪はあの人と会っていた。 友人なのか、恋人なのか…。 会って何を話すんだろう。 どんな笑顔を見せるんだろう。 今まで経験した事の無い感情に戸惑う。 僕の心の隅にある黒い染みは拡散する兆しを見せていた。 僕は凪の幸せを願っているはずなのに…。 胸が痛い。 するりとシャーペンが指から逃げた。 「あ…」 集中出来ない。 僕だけが取り残される…。 ぽたりとノートに水滴が落ちた。 涙が出たことに驚く。 (凪と二人だから強くいられたんだ) 一人ではこんなに弱い…。 …僕は、本当は弱かったんだ…。

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