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第35話

side晴海 式典の準備があるためにいつもより早く家を出た。 体育館にはもう都丸たち生徒会役員があれこれ準備を始めている。 指示を飛ばす都丸はカッコいい。 いつもああならいいのに、と思う。 「桜井、早いね」 東儀が声を掛けてきた。 こちらも単体でいる時はイケメンが過ぎてる。 都丸といるとただのオカンに見えるけど。 うっかり見つめてしまった。 「なに?」 「イケメンだなぁって」 真っ赤な顔になって回れ右してしまった。 「お、お世辞はいいから」 体育館を出て、どこかへ走って行った。 (あんな人だったっけ…) クールな雰囲気とは違うシャイな感じに更に好感度があがった。 都丸がこっちを見ている。 手をあげれば少し遅れて手があがる。 (僕を見ていた訳じゃないのかな?) もうすぐ式典が始まる…。 行進曲とともに新入生が入場してくる。 凪のすがたを見つけ、頬が緩む。 「凪…カッコいい…」 口からつい溢れてしまった。 他人に聞かれたらブラコンと言われるだろう。 背が高くスラッとした体躯、ふんわり揺れる少し色素の薄い髪、やや緊張した面持ちだが通った鼻筋も二重の瞳も全てがカッコいいのだ。 しかも最近は色気まで出てきたような…。 (…僕とは似てないよな) 直喜の姿も見つけた。 背が高いせいだけではない。 彼も動きがスマートで人目を引く。 (二人ともずるいよ) ふとそんな事を考えてしまったが、式辞が進むうちに忘れていった。 入学式が無事おわった。 片付けをしていると拘束された…。 都丸の胸のなかにすっぽりと収まっていた。 「片付け出来ないんですけど…」 「ん~、ちょっとだけ~」 後ろから抱きつかれ、されるがままになる。 「都丸!佐藤先生が探してたぞ」 いつものように東儀がやってきた。 「そうだった…。今行く」 ん?自ら離れていった…。 いつもは簡単には離れていかないのに。 ちょっと違和感があったがその時はそれほど気にしなかった。

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