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第36話

side晴海 (また凪と一緒に登校できる) 電車の中で朝から心が弾む。 「ふぁ~眠い…」 「凪、目が開いてないよ」 「晴くんが寝させてくれないから~」 「ち、違うよ。凪が…!」 言いかけて口をつぐんだ。 周囲の視線がこっちに向いている気がする…。 「不安なんだ」 伏せ目がちに、夜そんな事を言われたら部屋から追い出すわけにはいかない。 今日だけ、と言い含められて昨日の夜は久しぶりにいっしょのベッドで眠ったのだ。 凪の恋人に申し訳ないと思いつつも胸が高鳴ってしまう。 ベッドに引き入れて凪の体温を感じた。 (あったかい) 凪と触れ合う肌が熱を持つ。 (あ、ダメ…) 拍動が激しくなり、耳が熱くなる。 「晴くん、あったかいね。安心する」 凪が抱きついてきたおかげで、顔を見られずに済んだ。 凪の髪を優しくまぜながら、昔の事を思い出した。 僕が小学校高学年で凪が小学校中学年位の時、母さんが急遽夜勤につくことになった日があった。 大人のいない夜は子供にとって夢のような響きを持つが、その夢もすぐに覚め、不安や寂しさでいっぱいになる。 母さんが出掛けてはしゃいだ凪だったが、夜が深まるにつれ言葉数が減り泣き出したのだ。 僕もそうしたかったが凪に先を越され、今のように彼を慰めたのだった。 (あの時も一緒のベッドで抱っこして眠ったっけ) そのまま僕は寝てしまい何が不安なのか凪から聞くことは無かった。 だが翌朝目覚めた時、横で眠る凪の顔を見て僕は久しぶりに幸せな気持ちで満たされた。 僕には凪が必要なんだ。

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