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第37話
side晴海
階段で凪と別れ、3-1と書かれた教室に入った。
いつもなら教室に来ている都丸達はまだ姿が見えない。
予鈴が鳴りバタバタと急ぐ足音が聞こえる。
担任より一歩早く都丸と東儀が席に着いた。
東儀と目が合い軽く手を上げて応える。
だが都丸は東儀にヒソヒソ話し掛けてこちらを見ようともしない。
(都丸、どうしたんだろう?)
教室移動や選択科目授業が重なり、昼休みにようやく都丸に話し掛けた。
「今朝、寝坊でもした?」
「…ん?ああ、少し…」
温厚の見本という位穏やかな都丸が、珍しく気が立っているように見える。
自分が何かしてしまったのか。
気持ちが少し落ちる。
「もっと大人になれよ」
後ろから東儀が口を挟んできた。
「…!大人?どうせ子供だよ!」
乱暴に席を立ち、声を荒げて都丸は教室を出ていった。
「桜井のせいじゃないんだ」
僕の顔を見て東儀が言う。
「え?」
「機嫌を損ねちゃって…」
(機嫌?損ねる?)
「…そうなんだ…」
相づちはしたものの状況はよく分からないが、気にしない事にした。
五時間目で授業が終わると、放送室で連絡放送やら呼び出し放送を行い、その後は先生方に貸し出していた録音機材を物品庫に戻す…。
が…戻せない…。
入り口に段箱が積まれていて扉が開かなくなっていた…。
「またか…」
物品庫に用事があるのは放送委員くらいで、鍵は僕と生徒会が預かっている。
年度の切り替わり時期は書類の整理が追い付かず、一時的に段箱に積めて放置する先生がいるのだ。
とりあえず扉が開くように場所をずらして積み上げ直す。
だがとんでもない重さに泣きたくなった。
(昨日あんまり寝てないのに~)
ようやく扉が開くようになり、録音機材を戻す。
(あ、戻す場所が違ってる…)
違う所に置いてあるバッテリーやスタンドマイクをきちんと定位置に納めた。
自分のこの性格が恨めしい。
そうこうしているうちに
(あ~何だか眠気が…)
どうせ誰も来ないだろうと思い、物品庫の隅でちょっとだけ丸くなった。
だが僕はこの事を後で死ぬほど後悔するのだ。
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