37 / 179

第37話

side晴海 階段で凪と別れ、3-1と書かれた教室に入った。 いつもなら教室に来ている都丸達はまだ姿が見えない。 予鈴が鳴りバタバタと急ぐ足音が聞こえる。 担任より一歩早く都丸と東儀が席に着いた。 東儀と目が合い軽く手を上げて応える。 だが都丸は東儀にヒソヒソ話し掛けてこちらを見ようともしない。 (都丸、どうしたんだろう?) 教室移動や選択科目授業が重なり、昼休みにようやく都丸に話し掛けた。 「今朝、寝坊でもした?」 「…ん?ああ、少し…」 温厚の見本という位穏やかな都丸が、珍しく気が立っているように見える。 自分が何かしてしまったのか。 気持ちが少し落ちる。 「もっと大人になれよ」 後ろから東儀が口を挟んできた。 「…!大人?どうせ子供だよ!」 乱暴に席を立ち、声を荒げて都丸は教室を出ていった。 「桜井のせいじゃないんだ」 僕の顔を見て東儀が言う。 「え?」 「機嫌を損ねちゃって…」 (機嫌?損ねる?) 「…そうなんだ…」 相づちはしたものの状況はよく分からないが、気にしない事にした。 五時間目で授業が終わると、放送室で連絡放送やら呼び出し放送を行い、その後は先生方に貸し出していた録音機材を物品庫に戻す…。 が…戻せない…。 入り口に段箱が積まれていて扉が開かなくなっていた…。 「またか…」 物品庫に用事があるのは放送委員くらいで、鍵は僕と生徒会が預かっている。 年度の切り替わり時期は書類の整理が追い付かず、一時的に段箱に積めて放置する先生がいるのだ。 とりあえず扉が開くように場所をずらして積み上げ直す。 だがとんでもない重さに泣きたくなった。 (昨日あんまり寝てないのに~) ようやく扉が開くようになり、録音機材を戻す。 (あ、戻す場所が違ってる…) 違う所に置いてあるバッテリーやスタンドマイクをきちんと定位置に納めた。 自分のこの性格が恨めしい。 そうこうしているうちに (あ~何だか眠気が…) どうせ誰も来ないだろうと思い、物品庫の隅でちょっとだけ丸くなった。 だが僕はこの事を後で死ぬほど後悔するのだ。

ともだちにシェアしよう!