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第38話 【R18】

side晴海 物音と言い争う声で目が覚めた。 (ん?寝てた?) 「……だろ」 「…は、そんなのじゃない」 (ケンカ?) 「嬉しそうにしてたくせに」 「…違うって言ってる…」 「真っ赤になってデレてたし」 「…もう!」 (これはいわゆる痴話喧嘩?) ちゅっ、と音がした。 (…?) 「ゴメン…」 「…許す…」 (仲直りしたみたい) ほっとしたのもつかの間で、ちゅっちゅっ、といういわゆるリップ音が連続して聞こえる…。 「あっ、ちょっと…んん」 「仲直りナントカ…」 「あん、ダメだって…はんっ…」 (もしや、大人の展開…) 見ない方がいいと判っていても誰なのか気になる。 そーっと覗いて声を上げそうになった。 都丸と東儀だった。 棚に背を預けるように都丸が座り込み、その膝の上に向かい合う形で東儀が座り込んでいる。 東儀はズボンを履いておらずシャツは はだけていて、かろうじて肘にシャツが引っ掛かっている何ともセクシーな姿だ。 都丸は東儀の胸に顔を埋めているのか、東儀の背中越しだとよくわからない。 しなる東儀の背中が快感を物語っている。 「あ、ああ…ダメ…声が漏れちゃう…」 「誰かに聞かれるぞ」 「いや…ん、恥ずかしい…」 「一心…可愛い…」 「ああん、誠司…キスして…」 「ん…」 普段はどちらかというと固くてクールな東儀が、乱れて都丸に甘えてる…ように見える。 (見てはいけないモノを見てしまった…) テンパる僕をよそに、二人の行為はエスカレートする。 ぐちゅぐちゅという音がし始め、堪えきれない東儀の喘ぎ声が聞こえだした。 「あ、あ、あん…ん」 「くっ…」 (そっか、二人はこういう関係だったんだ) 仲がいいとは思っていたが、これ程までとは。 (…僕は凪とこんな風になりたいのかな?) 同性同士の行為に驚いたが、自分には凪とこうなる未来は無いのだ。 僕は部屋の隅で丸まり、二人に気づかれないようにただ早く終わることを願った。 また眠ってしまったようだ。 もう二人の姿は無い。 学生服についた埃を払い、部屋を出る。 まっすぐ家に帰りたくなくて大型書店に寄った。 店頭に並ぶ本を目で追っていても、さっきの出来事と凪のことで頭がいっぱいになる。 「ふう…」 ため息を一つ落として店を出た。 夕方の喧騒の中で人の波に体を預けて駅に向かった。 その中で見覚えのある頭が目に入り、後を追った。 凪だった。 その横には、あの綺麗な子がいた。 凪の腰に腕を回し、寄り添っている。 (恋人同士なら当然だ) 二人を見ているのも辛くなり 離れようとした時、気づいてしまった。 凪と一緒にいるのは男の子だ。 (何で?どうして?) (凪は男の子が好きなの?) (何で僕じゃないの?) 駅に向かって走った。 すぐにその場から逃げ出した。

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