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第42話

side晴海 家まで送るという直樹の申し出を断り、いつもと違う怠さを感じながら家路に着く。 頭がスッキリしてくるにつれて自分のした事を思い出し、青くなった。 (直樹とあんな事をするなんて…) (…僕は…どうかしてた) 恋人でもない、異性でもない…愛情の向いていない人に抱かれた…。 自分はどうかしていた、と信じたい。 「ただいま」 思い悩みながらも玄関でそう言うと、凪が出迎えてくれた。 「晴くん、おかえり」 いつもとおなじ笑顔だ。 (…でも…) 顔が見られない。 悪い事をしたわけではないのだ。 でも、、 ちらりと見ただけで、俯きがちに脇をすり抜けようとした。 「疲れてる?」 腕で通せんぼされる。 「う、うん。くたびれちゃったかな」 「…少し部屋で休んでおいでよ」 ふわっと、ほんの一瞬、凪に優しく包まれた。 幸せな気持ちで満たされるのがわかった。 …でも…。 この幸せな気持ちに満たされたままではいられない…。 「…うん。そうするよ」 俯いたままで返事をし、そっと離れた。 自室で制服を着替え、ベッドに倒れ込んだ。 (直樹のことは嫌いじゃない。でも…) (…でも…好きなのか…どうか…) (……) 考えてもわからない。 (…いつまでも凪と一緒にいるわけにはいかないんだ…) 自分の中で、無理矢理折り合いをつけた。 もう、、 戻れないのだから。

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