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第49話

side凪 二人の入っていったマンションの前で、立ちすくむ。 (…友達…かな…) 思わず握った拳が震える。 そうだ、違いない。 やり場の無い気持ちを収めることが出来ないまま、俺は家に帰った。 「…ただいま」 「凪、お帰りなさい」 母さんが出迎えてくれた。 俺と同じ色素の薄い髪を後ろで束ね、青いワンピースに花柄のエプロンをつけている。 「晴海は一緒じゃないのね」 ドキッとした。 「忙しいって言ってたよ」 「あの子、自分の限界が分からない子だから心配だわ」 「一生懸命になりすぎるんだよ」 ぶっきらぼうに答えた。 俺が周りに馴染めない時だって、俺以上に心を砕いて…。 母さんがため息を一つ落とす。 「凪が晴海と一緒に学校に行けるって分かった時ね」 母さんが俺の目を見つめる。 「晴海…ホント、嬉しそうな顔してね。 それまで凪のことで辛そうにしてたから、晴海のあんな嬉しそうな顔見たの久々でこっちが泣けてきちゃった。 もちろん、凪が頑張ったからだけど」 喋っちゃった事は内緒にしておいて、と母さんは言った。 晴くん、どれだけ俺の事心配してたんだろ。 俺の心が少し解れ、目頭が熱くなった。 俺は制服を着替えるため自室に行き、シャツで光る目元を拭った。 そして洗面所で顔を洗ってから食事の支度を手伝った。 夕食の支度が整う頃に晴くんが帰宅し、三人で食卓を囲んだ。 やっぱり晴くんは少し疲れているように見えた。 食事をしながら晴くんは学校での出来事を母さんに話していたが、橋本について何一つ話すことはなかった。 話せないのはやましいことがあるから? 俺にだけは教えて欲しい。 晴くんを見守ることにした。

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