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第56話
side凪
橋本はジーパンに黒いポロシャツ姿だった。
そして立ち止まることなくどこかへ向かって行った。
拓己はじっとその男を見ていた。
「イケメン気になる?」
からかい半分に聞いてみた。
「そういうのじゃない」
拓己が珍しく真面目に答えた。
(あれ?この雰囲気…?)
俺は拓己の顔を見て漠然と何かが気になった。
(顔っていうか…雰囲気?)
モヤモヤしたものをハンバーガーと一緒にコーラで無理やり押し流した。
side晴海
今日東儀は講習を欠席したので、都丸と二人で牛丼屋に入った。
ふたりで並んで牛丼を食べたが…少し居心地が悪いのは東儀がいないせいだろうか?
「都丸もこのまま大学に上がるんだろ?」
「ああ」
「東儀も上がるからまだ三人一緒にいられるね」
「…そうだな」
(…ん?都丸…?)
都丸の顔にちょっと影が落ちた気がした。
牛丼屋をでてから無言で駅に向かう。
何だか気まずい。
この二人でいること事態めったにない。
(二人だけって初めてかも)
都丸に気をとられていたら誰かとぶつかってしまった。
「あ、すみません…」
「晴くん!大丈夫?」
凪が僕に声をかけてくる。
ぶつかった相手は凪の恋人だった。
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