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第57話

side晴海 「えっと、大丈夫?」 緊張して声が微かに上擦る。 「あ、うん、ハイ…」 間近でよく見ると、中性的で綺麗な顔立ちをした子だった。 「凪の友達だよね?」 意識して口角をあげる。 「中学の同級生だよ。安堂拓己」 凪から紹介され、拓己くんはペコリと頭を下げた。 「僕は凪の兄で晴海といいます。拓己くん、よろしくね」 「都丸、僕の弟の凪。こちらは…」 「知ってる。生徒会長の都丸先輩」 紹介しようとしたがさすがに知っていた。 気まずい雰囲気を察したのか、 「じゃ、俺帰るから。またな」 そう言って都丸は雑踏の中へ消えていった。 「僕も帰るけど…凪は?」 「俺も帰る。拓己、明日な」 「わかった…じゃあね」 拓己くんは少し名残惜しいように見えた。 side凪 ハンバーガーをたいらげ店を出ると、夏の暑い午後だというのに結構な人出があった。 拓己は俺にぴったりとくっつき、まるで盾のようにして人混みを進む。 (くっつくと余計に暑い…) だが人混みでは身体中を触られたりナンパされたり面倒な事があると拓己が言っていた。 (美人は大変だ…) 考え事をしながら歩いていたせいか正面から来た人に気づくのが遅れた。 俺は反射的に避けようとして拓己の方に体を傾けた。 そのせいで拓己が誰かとぶつかってしまった。 驚いた。 そこには晴くんがいた。 拓己といる時に会いたくなかった。 握る手が汗ばむ。 晴くんが拓己に向かって話しかけているが言葉が出てこない。 (晴くん、拓己を見ないで…) 「凪の友達だよね?」 答えないと…。 「中学の同級生だよ。安堂拓己」 (…俺を見ないで…) 「僕は凪の兄で晴海といいます。拓己くん、よろしくね」 「都丸、僕の弟の凪。こちらは…」 「知ってる。生徒会長の都丸先輩」 晴くんの隣に立つ男のことを知らないわけがない。 「じゃ、俺帰るから。またな」 都丸先輩が晴くんに声をかけた後、じろっと俺を見たから何か言われるかと思った。 「僕も帰るけど…凪は?」 これから拓己とどこへ行くでもないし…。 「俺も帰る。拓己、明日な」 「わかった…じゃあね」 拓己と別れて晴くんと帰ることにした。

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