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第63話

side凪 晴くんとのわだかまりは表面上は とけたようだった。 全てが元通りになったかはわからないが。 あの日言い争ってから、俺は拓己とセックスするのをやめた。 好きな人を裏切っているような気持ちになるから。 拓己には正直に『好きな人がいる』と言った。 彼は『それならしょうがないね』と少しだけ寂しそうな顔をしてみせた。 けれども拓己のことを嫌いになったわけではないので“友達” として会っている。 「凪、ちょっと手をかしてよ」 拓己から声がかかった。 居間の棚から大きな収納ボックスを取り出そうとしていもがいていた。 華奢な彼の代わりに棚から引き出して床に置いた。 「見た目通り重くて」 拓己は悪びれず、そういい放った。 「確かこの中に…」 ボックスの中を漁って拓己が取り出したのはアルバムだった。 古いタイプのもので、端が傷んでめくれている。 拓己が中を開くと一面子供の写真だった。 「うわ、懐かしー」 「赤ちゃんじゃん、覚えてないだろ」 「そういやそうだ」 生まれたてから歩き始めた位のものが何枚も貼られていた。 「子供二人で写ってる写真が多いね」 親戚の子供と一緒に写真を撮ったのだろう。 ずっと二人で写っている。 そういえばどことなく顔の造りや表情も似ている。 拓己が突然、 「俺、双子なんだよ」 と言ったので俺は心底驚いた。 「え?誰と?」 「日本語!おかしいよ?」 兄弟がいるように見えない。両親と三人で暮らしているのだと思っていた。 「うん、凪の思っていることは半分位あってるよ」 「…ゴメン…」 「違うし。生きてる、多分」 アルバムをパラパラ捲ると、オムツを着けて走っている写真で終わっていた。 「ここで終わり」 「双子のもう一人はどうしてる?」 「さあ」 「え!そうゆうもん?」 「二歳位までは一緒にいたらしいんだけど…」 親の離婚で弟は父親に引き取られたらしいのだが本人が辛うじて覚えているのはその弟を “にゃーちやん”と呼んでいたということだけ。 手がかりにもならない。 「別に会いたいってこともないんだけど…」 (…会いたいのか…) 「双子なら拓己の写真で探せば?」 「二卵性らしいから…似てないかも…」 先に言ってよ…。

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