66 / 179

第66話

side晴海 凪は僕の事を愛していると言ってくれた。 僕も凪を愛している。 兄弟として、いや、それ以上…。 心が揺れる。 直樹は僕を受け止めてくれた。 何も聞かずに、ただ僕を受け入れた。 見返りも求めずに。 僕はどうしたらいいんだろう…。 「桜井、大丈夫か?」 「えっ?」 教室には僕と東儀と都丸の三人だけになっていた。 「あれ、終ってる」 今日の講習がいつの間にか終わっていた。 二人は顔を見合わせて首を振った。 やってしまった。 モヤモヤした気持ちを抱えたまま家に帰った。 「ただいま」 凪が帰ってる。 僕はリビングを覗いた。 凪がアルバムを見ている。 珍しい。 写真には興味が無いと思っていた。 「凪」 凪の体が大きく揺れた。 (そんなに驚かなくても…) こっちを向いた凪は悲しそうな目をして僕を見た。 「どうしたの?」 凪がアルバムへと視線を戻す。 「…晴くん…」 「何?」 「晴くん知ってた?」 凪の様子がおかしい。 顔色が悪く、指先が震えている。 「何を…」 「晴くんが小さい頃の写真がない」 僕は凪の言葉の意味がわからなかった。

ともだちにシェアしよう!