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第67話

side晴海 実のところ頭をよぎったことは、ある。 それは僕だけが似ていないから。 父さんとも、母さんとも、そして凪とも。 写真が無いのも知っていた。 二分の一成人式で使う赤ちゃんの写真を探したときに察したんだ。 小学校四年生の僕は、気づかなかったことにして心の底に封印した。 だって、心が耐えられないから。 今まで信じていた当たり前の事が違っていたなんて、受け入れられるはずがないから。 「…凪……」 「晴くん?」 「僕らは…兄弟じゃない、多分…」 凪の顔が強張った。 でも、これは恐らく事実。 「でもね、晴くん」 凪が正面から僕を捉える。 「僕たちは家族、そうでしょ?」 そうだ、本当の兄弟じゃなくても僕らは本物の家族…。 頬を涙が伝う。 「凪…ありがとう」 凪が僕をだきしめ、応えるように僕も抱き返した。 「っ…」 涙が溢れる…。 「晴くん…」 凪が僕の涙を唇で掬いとる。 …いつの間にか…二人 口付けていた。

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