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第69話
side凪
憶測で話をするのも嫌だから母さんに直接聞こう、と晴くんに提案した。
俺と晴くんは本当の兄弟なのかどうか。
母さんは俺と晴くんの顔を交互に見て、大きなため息を落とした。
「お父さんもお母さんもあなた達を心から愛している、それだけは忘れないでいて欲しい」
そう前置きして言葉を続けた。
「優(まさる)さん、お父さんとはね、話をしてあったのよ。あなた達に聞かれたら、全部話そうって」
それはある雨の日に起こった交通事故。
その事故は新聞に小さく載った。
だが失ったものはあまりにも大きかった。
side深雪(母)
当日、私は自分の兄の結婚式に行った。
式といっても極親しい、兄妹達が集まるようなものだった。
私は現地で私の妹の満流(みちる)と一緒に教会でお祝いした。
相手方の出席者は子連れのお姉さんだけだったが自分の事のようにとても喜んでいた。
皆が新しい門出を祝福し、幸せな人生を歩むことを疑いもしなかった。
簡素な、でもとても温かな式だった。
その日は予報より早く雨が降り始め、急いで教会からホテルに移動した。
皆この幸せは永遠に続くと思っていた。
でも、人生は時に残酷だ。
ホテルヘの移動途中、事故にあったのだ。
ゆるく続くカーブで対向車がセンターラインをはみ出した。
ハンドルを握っていた兄は即死、相手方の姉も亡くなった。
臨月だった私の妹は尽きる命と引き換えに赤ちゃんを出産した。
相手方の姉の連れ子は体が小さかったのが幸いしほぼ無傷だった。
兄の相手と私は重症を負ったが命は残った。
兄と妹を失い、私は生き残ってしまった。
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