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第71話
side晴海
「昔話はここまでよ」
母さんの頬にいく筋も涙が零れた跡があった。
「俺の母親は満流…さん?」
「凪、産みの親、だよ」
僕は訂正した。
目の前にいる人こそ僕らの母親。
「母さん、ゴメン…」
母さんは静かに首を振り、僕に優しい眼差しをむけた。
「…生き残った子供があなたよ、晴海」
母さんが僕に言った。
「小百合さんは事情があって婚姻届を提出していなかったから他の事はわからないの」
父親は判らないってことか…。
整理すると母さんは凪の伯母にあたり、父さんは僕の叔父にあたる。
「父さんが愛した人は凪の伯父さん?」
母さんはゆっくりと頷いた。
「…母さんはお兄さんの相手を、父さんを認められたの?」
問いかける凪の手は握りしめて白くなっている。
「私には愛する人が現れなかった。だから人を愛し愛されることが出来た兄さんを否定するなんてできなかった」
母さんが辛そうに微笑む。
「…満流は愛する人の子を宿し、小百合さんは愛する子を胸に抱いた。私には何か言う資格なんてない」
母さんは小さな肩を震わせている。
「俺は…母さんの子供で幸せだよ。父さんのことも好きだ…晴くんのことも…」
凪の目から大粒の涙が溢れ落ちる。
こんな寄せ集めの家族…家族ごっこと言われるかもしれない。
でも僕達にとっては本物の大切な家族なんだ。
「母さんは…幸せ?」
僕と母さんは血の繋がりがない…。
「もちろんよ。あなた達は私の愛する子供、生きる希望だもの」
僕の目からも涙が溢れ出して止まらない。
凪が母さんに抱きつき、僕もそれに続いた。
三人で涙が枯れるまでずっと泣き続けた。
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