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第72話

side凪 「つまりさ、僕達は普通の家族とは少し形が違うんだ」 「普通って何?これがぼくらの普通。他は知らない」 晴くんが笑って言う。 三人で泣いて、泣いて、一生分の涙を流した後、俺は晴くんと離れがたくて自分のベッドに引き込んだ。 「俺、晴くんが好きだ」 ベッドに寝転んだ晴くんが俺を見つめる。 「凪、ありがとう。僕も好きだよ…」 晴くんが俺に向かって手を伸ばす。 「…兄弟でも兄弟じゃなくても…好きだよ」 ぎゅっと抱き締められて、嬉しくて涙が頬を伝った。 あたたかい。 晴くんの温もりに包まれてる。 あれ?一生分泣いたはずなのに、まだ涙が溢れてくる…。 「ありがとう、晴くん」 たくさん話したいと思ったのに、上手くことばに出来ない。 そのまま二人で抱き合って眠りについた。 カーテンの隙間から日差しが漏れる。 「おはよう、凪」 ああ、晴くん。 「おはよう」 こんなに気恥ずかしい朝は初めてかもしれない。 「キス、…してもいい?」 そう言った晴くんはよほど恥ずかしいのか顔を真っ赤にして目を合わせない。 「ん、、」 俺は晴くんの頭をそっと抱えるように近づけ、目を閉じて唇を合わせた。 触れるだけの優しいキス。 名残惜しく二度三度啄むと、いつでもできるから、と顔を押し返されてしまった。 そしてベッドの中で子供の頃のようにじゃれあった。 昼近く、母さんに呼ばれると居間に父さんの姿があった。 「父さん、お帰りなさい。いつ戻ったの?」 晴くんの声が少し緊張している。 「ただいま。晴海、凪」 父さんは俺達二人の肩を抱いた。 父さん、こんなに小さかったっけ? 久しぶりに会って驚いた。 「母さんから話は聞いたね」 俺達は黙って頷いた。

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