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第73話

side優 深雪さんから久しぶりに電話がきた。 社宅に戻って来て、買ってきたお弁当に手をつけようとしたところだった。 「あの子達に話したわ」 「そう、ありがとう。」 遂にこの時がきたのか。 彼女から話をしてくれたのならそれでいい…でも、僕からも彼らに話をしておきたい。 「明日そっちに行くから。お昼前には着けると思う」 「そうね、、その方がいいわね」 じゃあ明日、と電話を切った。 冷めたお弁当の蓋を開けながら、明日久し振りに会う息子達にどう話しだそうかと考えた。 「父さん、お帰りなさい。いつ戻ったの?」 「たった今だよ、ただいま。晴海、凪」 息子達は以前よりも男らしく育っていた。 もう立派な青年だ。 二人の肩に回す手に力がこもる。 「母さんから話は聞いたね」 頷く二人を前に僕は話を始めた。 僕は物心ついた時には、すでに恋愛対象は同性だった。 好きな人が出来ても同じ性的嗜好かわからないから告白すら出来なかった。 告白出来ない苦しみ、告白を受け入れてもらえないだろう悲しみ。 僕はなるべく人と関わらず一人で過ごすようにしていった。 一人は気楽だ。だがふとした瞬間に寂しさが募る。 毎日を淡々と過ごす日々の中で彼、豊さんと出会ったんだ。 明るくて気さくで頭が良くてカッコいい…ぼくにはもったいない程の人だ。 彼は僕に安らぎと安心を与えてくれた。 勿論いろいろな不安要素はあったけれど二人で乗り越えてきた。 そして彼が僕にプロポーズしてくれた。 嬉しくて胸がいっぱいになった。 こんな僕でも愛され、必要とされるのか…。 さらに嬉しいことに彼からの提案で教会で結婚式を挙げられることとなった。 だがそこで僕は彼と永遠にお別れすることになってしまったんだ…。

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