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第74話

side優 結婚式当日、晴海はまだ小さくて僕にとても懐いてくれていて、いつもと違う雰囲気にとてもはしゃいでいたよ。 姉さんにはいろいろ心配かけたけどその分幸せになるからと約束した。 「あたりまえでしょ」 そう言って微笑んでくれた。 いつも優しい豊さんは一段と優しく王子様のようだった。 王子様っておかしいかな…男同士なのにね。 その日は夜から雨が降るという予報だったけれど、夕方前に降りだした。 ホテルまで僕が運転するって言ったのに、 「疲れているだろう?」 そう微笑んで運転を代わってくれた。 ホテルへ向かう途中で雨が強くなって視界はだいぶ悪かったけどスピードを抑えていたから危険だとは思わなかった。 安心しきっていたんだ。 車内は教会で挙げた式について盛り上がって、、、 ふっとフロントガラスの向こうから黒い影が見えて…車が凄いスピードでこちらに向かってくるのが見えて……。 事故の瞬間は記憶がないんだ。 激痛で目を覚ますと車は大破していた。 豊さんは即死に近かったようで、握った手がどんどん冷たくなって声を掛けたけど反応がなかった。 ショックだったよ。 姉さんや他の同乗者の様子も気になったけど…出血量が多くて…意識を失ってしまった。 病院で事故の事を聞き、正直に言って死のうと思った。 僕が運転していたら、豊さんは死ななかったかもしれない。 僕は自分を責めた。 愛する人を失って生きる意味なんてないから…。 それでも死ななかったのは、晴海、君がいたから。 本当なら別の病棟に入院するはずなのに同じ病室にしてくれて…今思うと計られたなって。 母を失くした小さな君が前に進んでいこうとする姿を見せつけられて、死ぬに死ねなかった。 そして、深雪さんから子供達を引き取る事を聞かされたんだ。 僕を愛した人はいなくなってしまったけど、まだ誰かを愛せる。 姉さんの残した晴海を愛していこう。 なら、いっそ残された者同士で生きていってもいいのでは…? 「僕も彼らを希望にしてもいいでしょうか?」 「…もちろんです…」 僕に生きる意味ができたんだ。

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