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第4話 『直×拓編』

side拓己 会いたいって言って、三階のいつもの教室で待ち合わせた。 もうその人は来ていて、オレに早く会いたかったのかな、なんて勝手に想像して顔がゆるむ。 「オレ、高校決まったんだ」 「おめでとう。もうすぐ高校生になるんだね」 好きな人に合格の報告をした。 「勉強がんばったんだ」 照れ臭くて顔が見られない。 一瞬だけ、チラッと見た。 椅子に座ってオレに微笑んでいる。 その笑顔のままでオレを抱き締めて欲しい。 髪を撫でて、手を繋いで、キスをして…。 「卒業したら遊園地デートしたい」 静かに微笑んだまま…。 「…ねえ、何か言って」 不安から袖を掴んで揺さぶる。 「…いつも、肝心な事…言ってくれないよね…」 少し悲しそうな顔になった。 でも……続ける。 「オレのこと、嫌いになった?」 少しの間を置いて… 「…好きだよ」 ああ、これは……嘘… 「オレの事…好きじゃないんだろ?」 「……」 「ずっとオレを騙してたの?」 涙が目に膜を作って視界がぼやける。 泣いちゃダメだ。 「…卒業するまで、って思ってたの?」 自分に言い聞かせても溢れ出てくるものは止められない…。 「…本当は…本当はオレのことなんか好きじゃなかったんだろ!」 「嘘はついてないよ」 立ち上がり近づいてくる。 「恋人ごっこも、もう卒業だね」 やっぱり…無理やり付き合ってくれていたんだ…。 「うっ…うう…」 堪えていたものが堰を切って流れ出す。 「オレは本当に好きだったのに…」 差し出されたハンカチを手で払った。 「…期待させておいて…残酷だよ…槙…せんせい…」 オレは勢いよく教室を飛び出した。

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