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第13話 『直×拓編』

side直樹 一人は嫌いじゃない… 孤独も…。 もう、ずっと一人ぼっちだったから。 曖昧な記憶の中の家族は全てピンボケで、母の顔も、一緒に暮らす父の顔でさえも輪郭を失う。 人付き合いが煩わしい訳ではない。 ただ、ずっと一緒にいるべき人ではないから… 俺の片割れともいえるような、そんな人と出会えるのはいつだろうか…。 気づいた時には父と二人だった。 父子家庭に行政支援があるわけでなく…あったとして利用出来たかはわからないが…いつも一人だった。 学校では他の子供達と変わらないように、他人の目にそう見えるように振る舞った。 一人は嫌いじゃない。 一緒にいたいと思わせるような、そんな人に出会えてこなかっただけ。 父の都合と偶然で、隣家によく預けられた。 隣家の子供達も夜まで大人の帰りを待っていた。 子供は子供同士でいた方がいいと言う父と隣家の大人の判断だろう。 行きたいとも嫌だとも言わずに夕方から夜にかけてそこで過ごした。 一人の子供は…凪という名前だが…俺と同い年だが部屋に閉じ籠ることが多く、喋ることも殆どなかった。 だがもう一人の子供…2才年上の晴海…は、何かと気にかけてよく相手をしてくれた。 そこで過ごすのが当たり前のようになった頃、父の仕事の都合で引っ越しを余儀なくされた。 小学校を卒業したその日に、俺は知らない土地に父と向かった。 一人は嫌いじゃない。 ただ、一緒にいたい人が見つからないだけ…。 中学校を卒業すると、子供の頃過ごしたこの町に帰って来た。 思い入れも何もない、この町に。 ただ、晴海にだけは会ってもいい。 無理を言って、晴海の通う私立高校に進学した。

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