100 / 179
第19話 『直×拓編』
side直樹
シャワーを浴び、体の熱をバスルームの排水口に流した。
後悔はしていない。
でも…晴くんが泣いた所につけ込んだ…。
(…サイテーだ…)
ガタン、と浴室の扉の外で物音がした。
(晴くん…?)
扉を開けて出るとぱっとこちらを振り向いた。
「こ…これ…」
自分の胸の辺りを指差している晴くんは、明らかに動揺している。
「うん、キスマーク。俺のものってシルシ」
「な…んで…?」
「晴くんが可愛いのがいけないんだ…」
近寄って腕の中に晴くんを収めた。
指先で赤い印を撫でる。
「…俺のものになってよ…」
晴くんは揺れる瞳で黙って俺を見つめた。
送って行くって言ったのに、大丈夫の一点張りで晴くんは一人帰った。
自分の部屋で…今まで晴くんといたベッドに横になって…目を伏せた。
晴くんの想い人…誰なんだろう…。
好きな女子が女子と付き合ってるって…絶望的じゃん。
男の晴くんに望みはない。
それなら…俺でもいいんじゃない?
俺は今、フリーだし。
晴くんが…俺でいい、俺のほうがいいって言ってくれれば…。
ともだちにシェアしよう!