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第20話 『直×拓編』
side直樹
電車通学はラッシュ時間を避けられないのが辛い。
今日は一段と混雑している。
自分は寝起きが決していい方ではない。
まだ半分寝ぼけた頭でラッシュの電車に乗っていた。
電車が揺れる度に腕に力を込めて耐えるが、肩に掛けていた通学用の鞄が人の波に押されていつの間にか車両の端まで体が移動していた。
(こんな所まで流されて…)
すぐ下車するのに面倒だな、と気づかずにため息を落とした。
視界の先に目をやると…自分の身長はまあまあ高い方なのだが…同じように背の高い男が目に入った。
彼より背の低い誰かと楽しそうに話をしている。
あいつ……凪だ…。
相手は多分…晴海…。
久しぶりに見た幼馴染みに以前の面影は殆ど無く、まるで普通の高校生のようだった。
小学校に通っていた頃は話す姿をほとんど見たことが無い。
暗い感じであまり子供らしくない…それが…
あの変わり様…。
晴海限定なのは間違いない。
人はそんなにすぐには己を変えられないから。
…っ、ぐらっと揺れ、手すりを握る手に力を込めた。
「すみません、降ります」
人を避けるように電車を降りた。
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