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第21話 『直×拓編』
side直樹
(同じ時間の電車に乗っていたのか…)
家は近所で通う学校は同じとくれば不思議なことじゃない。
電車を降りて改札を通り抜け、学校まで約一キロ歩く。
その少し前を晴海が凪と歩いている。
(あの弟と一緒にいて話すことあるのかな?)
晴海の笑顔を不思議な思いで見た。
学校が近付くとすぐ隣に見知った顔があった。
「橋本、おはよう」
「よっ、志摩」
事代堂 志摩(ことしろどう しま)は、この学校に入学してからの友人だ。
名字がやたらと長いので下の名前で呼んでいる。
「今日は先輩と一緒じゃないのか?」
「橋本、聞いてよ~先輩酷いんだよ~……」
志摩は一つ上の先輩、柴田真幸の熱烈なファンなのだ…。
科学部に所属する柴田先輩は高校生ながらいろいろな研究をしているようで志摩はよく手伝いをしているらしい…。
端から見ると“嫁”のようだ。甲斐甲斐しくお世話している…。
「うん…そう…大変だね…」
適当に相づちを打っている間に学校に着いた。
「僕、第一理科室覗いてから行くから」
「ハイハイ」
一瞬だけ振り返った志摩に、俺はひらひらと手を降った。
教室に向かわず反対方向に走って行った志摩を見送り、俺は階段を上がっていった。
放課後、検定試験の申し込み用紙を取りに職員室に向かうと晴くんがいた。
その視線の先には凪が…。
急に走りだしたのを無意識に追いかけた。
「あっ!」
階段を降りようとする晴くんは足を滑らせたが…ギリギリでその体を支えた。
「直樹、なんで?」
「ありがとう、じゃないの?」
「ゴメン、ありがとう。助かった」
表情がくもっていて何だか辛そう…。
「ん?何か…」
支えていた体を抱き締めていた。
「辛そうなんだけと」
ビクッと体を震わせた晴くんは中途半端な笑顔を俺に向けてきた。
「そんな顔すんな」
髪をくしゃくしゃにまぜて晴くんを見れば、その頬に涙が伝っていた。
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