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第22話 『直×拓編』

side直樹 泣いている晴くんを一人に出来ず、俺は心配だから一緒に帰ると言い張った。 晴くんはこんな時でも、どうしても放送室に行くというから用事が終わるまで廊下でじっと待っていた。 俺はその間に晴くんの涙の理由を考えた。 『好きな人に恋人がいる…しかも同性の…』 その事を思い出しちゃった…? それとも、その相手が学校の関係者で顔を合わせて気まずかった? 直接聞いて傷口を開くより次の段階に進んだ方が忘れられるのかな。 あれこれ考えてみても答えは出ない。 「直樹、本当に待ってたんだ」 晴くんが柱の陰から顔を覗かせた。 「心配だから一緒に帰るって言っただろ」 「子供じゃないし」 くるっと背中を向けてそう言う晴くんは、少しだけ嬉しそうだった。 「俺はやりたくてやってるからいいんだ」 近寄って後ろから優しく晴くんの背中を包み込んだ。 朝、晴くんを見かけた電車に二人で乗っている。 駅に着いたらそれぞれの家に帰らなければならない。 俺はもうちょっとだけ一緒にいたくて、家に帰っても一人だから寂しいと、晴くんを喫茶店に誘った。 「晴くんを見ていられない」 アイスコーヒーをストローでくるくるとかき混ぜながら晴くんを見つめる。 「何の事?」 でも、俺は騙されてあげない。 「晴くんは何が辛いの?」 「ストレートに聞いてくるね」 晴くんはストローで氷をつつきながら答えを探しているようだ。 「無い物ねだり…かなぁ」 無いもの…そんな不確かな物のために悲しんで涙を流していたのか…。 胸が締め付けられる。 「あるもので、いいんじゃないの?」 そう言うと晴くんはポカンとした顔をした。 「俺がいるだろ?」 晴くんの顔がリンゴみたいに真っ赤になった。

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